紙コップについて

紙コップは20世紀初頭にできたと云われています。当時の米国では、軍の基地や学校の寄宿舎で常に何らかの感染症が多発しており、その原因の一つが、うがいや水飲みなどで使い廻される金属製のコップにありました。不特定多数の人が共用していたのです。乱暴に扱っても壊れにくいのですが、衛生面から見ればとんでもない代物です。この対策として紙コップは誕生しました。

こうして登場した紙コップは、全米各地の基地や寄宿舎に広がり、衛生環境の改善が計られます。当時の素材は紙単体で水飲み用でしたが、その便利さから様々な飲料用に進化していきます。

今や米国を代表するフードモデルとなったファーストフードもその一つです。紙コップの利便性はハンバーガーショップの成長を支えて来ました。ホット用紙コップは、内面 PE(ポリエチレン)ラミネート加工で耐水性があります。コールド用紙コップは、当初のパラフィン(糊とワックス)加工から、最近では両面 PE ラミネート加工が主流になりました。しかしチェーン店の宿命としてコスト追求が迫られる中で、どちらも 200 ~ 220g/ ㎡程と、やや薄い原紙が使われています。それはハンバーガーショップなどのファーストフードを始め、多くの紙コップが同様でした。

日本では主に自販機用や給茶用の紙コップなどがそれにあたります。実は私が最初に紙コップを商品として扱ったのも、オフィスの給茶用でした。当時、大手商社や外資系企業では、社員の負担軽減のために、湯飲み茶わんでなく、紙コップがたくさん使われていました。

次いでハンバーガーショップなどの取引を経験しながら、コーヒーショップにかかわり始めました。そこでは今までの商品と異なり、 厚紙カップと A-PET 樹脂のクリアカップが使われていたのです。280g/ ㎡以上の原紙を使った紙コップは、分厚くて頑丈で、熱いコーヒーをたっぷり入れることができます。同じくしっかり持てるクリアカップで、冷たいアイスコーヒーやソフトドリンクを提供しています。過去に無かったマテリアルが、コーヒーショップを支えています。

紙コップには多岐にわたる商品があり、世界中で大量に使われています。便利さに目を向けがちですが、使われる紙の原料は、ほとんどが森林から供給される木材チップで、原料としての再生産には長い時間がかかります。また必要とされる機能を満たすために、多くの場合はポリエチレンなど、石油由来の原料が併せて使われています。

(1)紙コップの原紙

紙コップの材料は木材チップから抄造された板紙です。様々な原紙が使われていますが、カフェグッズはクラフト紙と白板紙の貼合原紙に注目してきました。それは訪米視察ツアーで何度も目にした、Blue Bottle Coffee さんの紙コップやリッドに感動したことが契機でした。

クラフトカップは、単紙の厚紙カップに比べて、強度や保温性にやや優れています。しかし 2枚重ねのために原紙の反発が強く、成型不良を誘発するリスクが常にあります。製造技術的にも機械的にも、ハードルが高いと云えます。また、FSC クラフトカップは、森林再生プログラムに基づいて森林資源を守り、環境破壊を防ぐことを目的としたシステムですが、木材の再生産は長い道程です。こう考えていた時に、産業廃棄物でもあるバガスを原料とした、非木材紙の紙コップに出会いました。サトウキビの搾りカス(バガス)をパルプ化して紙コップができれば、木材資源の削減が可能です。同時にバガス残渣の廃棄で一部を担う、焼却処理を減らすことに繋がり、環境負荷を低減できます。こうして非木材紙のバガスカップを積極的に扱うことにしたのです。カフェやコーヒーショップ向けの厚紙カップとしては、国内初ではないでしょうか。

カップ内面のラミネート層で 液体の透過を防止します。PE ( ポリエチレン ) や OPP など、いずれも石油由来のラミネートが多い中で、カフェグッズは 2013 年から一貫して、植物由来の PLA ラミネートカップをご提案しています。

(2)ラミネート材

紙コップに求められる機能に耐水性があります。飲み物が漏れることを防ぐために、多くの場合はポリエチレンをラミネートしています。原料は石油由来の PE(ポリエチレン)です。使用量は紙コップの重量比で1割以下ですが、リサイクル法では、複合材料のうち最も多い素材の表記ですので「紙」となります。

一方近年では、植物由来のポリ乳酸から生成される、PLA 樹脂をラミネートした紙コップが登場しています。ポリエチレンに代えて PLA 樹脂をラミネートするのですが、製造工程は同一です。植物由来の PLA を使った紙コップは、コンポストでバクテリアの活動により分解されて土に還ります。100%生分解性とはこの循環を指しています。

PLA はトウモロコシやジャガイモなど、食料を原料にすることへの懸念や指摘があります。しかし原料として食物以外の植物からも生成が可能です。種々の草木や、時としてやっかいな海藻類、一年草の循環栽培などの活用方法が研究されています。いずれ産業化される日が近いのではないでしょうか。

またサトウキビで製糖原料として利用されているのは、糖分濃度が高い、根から伸びた太い幹の部分です。根や茎の先端や枝葉は農家が切り落とし、畑で処分しています。2004 年に公開された、「深呼吸の必要」という映画がありますが、サトウキビの収穫を人手に頼る畑に、アルバイトのキビ刈り隊が集まります。目的のために共同で作業する彼らに、いつしか責任感と絆が生まれます。この映画では、機械化できない畑のサトウキビ収穫作業の厳しさが理解できます。長田弘さんの散文詩集「深呼吸の必要」は、子どもから大人への転換点を、心に響く表現で綴っています。映画製作者の意図もここにあるかも知れません。

そして、紙コップなどの包装材や広く環境問題を含めて、今は転換点に差し掛かっているのだと思います。

カフェやコーヒーショップは、今後ともニーズが高まるビジネスです。だからこそ紙コップを含む資材には、できるだけ持続可能なマテリアルを使ったビジネスモデルが必要と考えています。環境に優しいことはもちろん、オーバースペックをできるだけ避けながら、適切に原料と資材を利用することも重要になりつつあります。

日本の「もったいない」精神は世界の模範とされています。資源の有効活用を図る一方で、廃棄物の削減や再利用といった課題にも、積極的に取り組んでいきたいと考えています。

次回は記憶に残る古い話を少し書きたいと考えています。

2021 年 1 月
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