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社長コラム
Vol.1
パッケージで見る、日本のコーヒーショップの現状Ⅰ 紙コップの歴史
20世紀初頭のアメリカでは、軍隊の宿舎や学生寮から人々の市民生活まで、洗面や水飲みにアルマイトのコップが共同使用されており、ひとたび感染症の疫病が発生すると瞬く間に広がりました。デキシ-社が開発した紙コップが、伝染病の蔓延を防止する重要な役割を果たしました。
うがいや水飲みのための紙製の白いコップが、生活環境の改善を担って登場してから、約1世紀の今日、私共の生活のあらゆるシーンで紙コップが使われています。

ヨーグルトやジャムなどの食品容器、自販機や給湯機で大量に使われる飲料カップ、レジャーやホームパーティーのシーンでも役立っています。
そして現在は、ファーストフードショップに始まり、様々な形態のコーヒーショップから、カフェ・デリ・ベーカリーのテークアウトシーンには不可欠の商品になっています。その中でも特に、紙コップが主役とまで言われているのが、ファーストフードとコーヒーショップです。

ただ飲み物を入れて飲むことができれば良かった時代 から見れば、それぞれに業態の進化を支え続ける紙コップもまた着実に進化しているのですが、この点にスポットを当てて行きたいと思います。
コーヒー業界の周りで大量に使われている紙コップに、興味を持っていただければ、幸いです。

コーヒーのための紙コップとは従来の主要な紙コップはファーストフード(FF)の大量に使われるポピュラーな商品群です。マクドナルド・バーガーキング・KFC・ウェンディーズ・タコベルなどに代表されるファーストフードは、世界中にその店舗を張り巡らし、膨大な量の紙コップを消費しています。

これらのFF業態で使われるホットドリンク用の紙コップは、230g/㎡位の規格で、内面がポリエチレンラミネートされたカップ原紙(バージンパルプ・食品検査済み)を使っています。 ちなみにコールドカップですが、従来使われていたワックスを塗布したものが姿を消して、ホットカップと同じく内面ポリラミで、外側を撥水加工したものが使われています。使用原紙はホットカップよりも薄く、200g/㎡位が一般的です。

また日本で開発された断熱カップという商品があります。両面ポリラミカップの外側ポリエチレンを、特殊な方法で発泡させたのですが、断熱性保温性に優れた発泡PSを押しのけて、FF業界定番のホット用紙コップになりました。この断熱カップは各社で製造技術が異なるために、触ったときの感触が少し違います。

また印刷ですが、紙に直接印刷する方法(ポリ下)と、ポリエチレンの表層(ポリ上)に印刷する方法があります。これは折角のロゴやデザインが曇った仕上がりになることを避けるために開発された技術で、最近よく使われています。
断熱カップ製造技術による米国の紙コップは、日本からの技術供与を受けた1社だけの製造ですが、ポリ上印刷で造られています。

一方、コーヒーショップのカップは、米国で市場が拡大し始めた1990年頃に、250~280g/㎡以上の原紙を使った厚紙コップが開発されました。では、なぜ厚紙コップが使われ始めたのでしょうか。

コーヒーに求められる価値が変わってきたことで、使うカップにも付加価値を求めた結果、やっと開発されたのが厚紙カップなのです。
FFでもホットコーヒーがメニューにありますが、両者の間では、コーヒーに要求する価値が大きく違います。
FFのコーヒーは、早く簡便に食事を食べるための、ドリンクメニューの一つです。コーラやジュースと同じメニューポジションになります。
しかしコーヒーショップ(米国発のスペシャリティまたはエスプレッソ系コーヒーを指しています)は、コーヒーの香りに親しみ、コーヒーの深い味わいを楽しむ場所なのです。

1966年4月に、サンフランシスコ郊外のバークレーに誕生したアルフレッドピーツの1号店をスタートとして、米国のコーヒーは新しいページを開きました。1990年頃には米国内のスペシャリティコーヒー市場が急拡大しています。

発泡PS(ポリスチレン)のカップが一部で未だに使われている米国ですが、シアトル系大手御三家を始めとして、チェーンコーヒーショップでは、厚紙カップが圧倒的なシェアを持っています。

この厚紙コップの利点は、FFとの差別化という要素が重要なのですが、ただ紙が厚いだけではなく、機能性やその仕様にいくつも特徴があります。

一つはメニューを支える、カップのサイズバリエーションの豊富さです。
エスプレッソ・ソロとドッピオの4オンス、ショートの8オンス、トールの12オンス、グランデの16オンス、ヴィンティの20オンスというカップサイズが揃っています。
そして今や文化と言われるまでになった、蓋をしたままコーヒーが飲める、トラベラーリッドの存在があります。その拘りはただ蓋をしたまま飲めるとか、歩きながら飲めるという次元を超えた機能にあります。

カフェラテやカプチーノというエスプレッソ系のミルクコーヒーを、どうしたら最も美味しく飲むことが出来るのか?先にフォームだけ飲んでその後はコーヒー液ばかりという飲み方では、折角のラテやカプチーノが台無しです。そのために飲み口の位置や形と、フタの段差形状が考案されました。

こうして文化というに値する紙コップスタイルが確立したのです。こうした主力商品への拘りが業態の差別化を支えています。
その点でアイスドリンクを見ますと、FF市場で使われている紙コップから離れて、透明でクリアなプラスチックカップを採用しました。ガラスのコップと同様に、美味しさを伝え、清涼感を演出することができるのです。
アパレル系のカフェの多くが、コーヒーは陶器でサービスしながら、コールドはA-PETカップを使っています。スタンバイの煩雑さや割れの危険を考えたのですが、このスタイルが定着しつつあります。

また最近では、クリアカップをサラダやフルーツに使うと共に、スイーツ全般のメニュー開発に応用し始めています。それもA-PETカップがあって開発されました。容器冥利に尽きる話です。

ここで加えて指摘しておきたいのがカップを使う側への配慮です。米国輸入品は、どのサイズのカップとリッドも、全て1ケースが1,000個・1,000枚という、荷扱いに大変便利な入数になっています。また小規模の店舗でも、店名やマークを入れたオリジナルカップが出来るように、印刷の最少ロット数が5万個と少ないことが、顧客に大きなメリットを提供しています。

ちなみに日本の厚紙カップは、8オンスで12万個、12オンスで9万個前後が各メーカーの最少ロットです。米国の小さなコーヒーショップがオリジナルデザインの紙コップを使っていますが、こうしたメーカーの姿勢に依るところが大きいと思います。
カフェやコーヒー市場を、豊かで活気あるものにするために、またお店同士が創意工夫と努力による、やりがいのある競争にするために、学びたい点の一つです。