TOP > カフェレポートTOP > Vol.1 珈琲工房 大石 PEACE COFFEE
カフェレポート
珈琲工房 大石 PEACE COFFEE

「珈琲工房 大石 PEACE COFFEE」
千葉県茂原市茂原15-5 山田ビル1F
TEL:0475-25-4377
http://peace-coffee.jp/
千葉県茂原市は県央部に広がる人口9万人の落ち着いた田園都市である。発展著しい千葉市緑区にも近いのだが、高速道の未整備区間などもあり、交通の点では少し遠い存在と言えようか。実際に茂原市へ車で向かうと、東京から京葉道路経由で約2時間、東京湾アクアライン経由でも約2時間のドライブとなる。

今回訪問した珈琲工房はオーナーの大石誠さんが24才の時、念願叶って開店した自家焙煎コーヒー専門店である。開店した1995年といえば、スターバックスコーヒーの日本進出の前年で、喫茶業界は絶不調の真っ直中で呻吟していた時代である。中学生の頃から喫茶店の経営を夢見ていたという大石氏だが、その夢を踏み出した開業時代は想像以上に厳しい船出だった。振り返れば、経済成長と共に来る喫茶店の全盛期があり、食事メニューの導入による食堂化にひた走った混迷期があり、コーヒーへの拘りを失った結果の低迷が続く時代の船出だったのである。自家焙煎の挽売スタイルを目指すも、当時の茂原は前人未踏の地。自らレギュラーコーヒーの市場を創り出すことから始めなければならない。そのためにはコーヒー専門店としてお客様を迎え、自家焙煎コーヒーに親しんでもらう場所として珈琲工房大石は開店している。実際にコーヒー豆が一粒も売れない日でも、喫茶のお客様が数人はお見えになる。数人が数十人になり、顔なじみのお客様が増え始めると、徐々にコーヒー豆の販売も伸び始めている。その過程でいろいろな事件に遭遇するのだが、「挽いて持ち帰ったコーヒーが粉っぽくて飲めない」というものまで登場する。インスタントコーヒーと同じようにカップに粉を入れ、お湯を注いでかき回しても、いつまでも溶けないので飲めないというのだ。これはパイオニアとされる方々に共通の経験である。
珈琲工房大石の本店は、焙煎工場と挽売を兼ねたコーヒー専門店が同居する。圧巻は店内に2機設置された焙煎機だ。客席とは低い仕切板1枚しかなく、焙煎中は煙の洗礼が避けられない。工場の中に客席を設けたとも言えるが、サンフランシスコのCOFFEE ROASTERYと同じスタイルで、エキサイティングな演出である。カウンターにはチンバリのエスプレッソマシーンが置かれ、バリエーションコーヒーを積極的に取り込んでいる。昨年末に開店した10年目の新店「PEACE COFFEE」はこの延長線上にあり、完全なシアトルスタイルのコーヒーショップだ。ラテ・カプチーノを中心としたエスプレッソメニューと、コーヒーショップならではのフードメニューが並ぶ。フードの中心は老舗マコーズのベーグルを使ったサンドイッチと地元の有名店から取り寄せるケーキ類。カップサイズで3バリエーションを揃えるバリエーションコーヒーとの相性が抜群だ。その場所は茂原市役所に近く、128号線茂原バイパスに面した好立地である。ロードサイド立地ではあるものの、平日は市役所職員や来訪者のランチニーズを受け止め、テークアウト客も多い。週末となると隣接するショッピングセンターからの家族連れや若者達の来店が多く、カウンターを含め40席ほどの客席は満席状態が続く。もともと市役所斜向かいの交差点角には、一時期ドライブスルーで日本一の売上を誇ったマクドナルドが君臨する。他にも128号線バイパスはファーストフード系外食チェーンの店舗が連なる激戦区である。その中に一見見慣れない業態で出店したPEACE COFFEEは、既に東京や千葉でコーヒーショップ体験済みの若い客層を集めることとなった。セルフスタイルでありながら、バリスタが丁寧に作り上げるカフェラテは驚くほどに美味しい。そして次第に年輩の方と家族連れの来店数が増え始めたのである。

現在の茂原には、スターバックスやタリーズなどの大手コーヒーショップチェーンは進出していない。その業態ではPEACE COFFEEが茂原のパイオニアであり、且つ№1コーヒーショップである。大石氏10年の経験と、エスプレッソバリエーションという新しいニーズへの進取の取組みが、現在の地位を確立したことは想像に難くない。そして今秋には、現状に甘えることなく、次展開に踏み出すことが決っている。それは焙煎工場の移転と、併設する挽売店及びコーヒーショップの出店、更にSC内へのチョコレートショップと複合カフェの出店というものである。焙煎工場を中心にコーヒーショップを複数店舗展開し、茂原における有望立地を他社に先駆けて確保することを目指した動きでもある。
自家焙煎コーヒー専門店として10年の道を歩んできた珈琲工房。シアトル系コーヒーショップとして2年目を迎えるPEACE COFFEE。日本のコーヒーシーンを見据えると、地方にこそビジネスチャンス有り、と言う声が聞こえてくる。